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| プロフィール |
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Author:しげぞう
☆ご訪問ありがとうございます。 それゆけ忍者(完結掲載)
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| それゆけ忍者 【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語 |
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| 第一章 その7 |
三人は簡単な打ち合わせをして、来週の日曜日のオークションは午前十時から開催。「わんランド感謝オークション」として、三十万円からスタートすることにした。 そして、店長はスタッフにオークションの案内ポスター制作を一時間以内に仕上げるよう指示した。ポスターが完成するまで、ミニチュアダックスAZの仔犬の販売は「わんランド感謝オークション」で、行うことを店内放送した。 「オークションか……おもしろそうだ」 「三十万円のスタートは安いな」 「えっ、三十万円から、やっぱり高いなぁ……」など、 放送を聴いたお客さんの反応はさまざまだった。しかし、これで本当に珍しいミニチュアダックスAZの仔犬を買いたいと思っているお客さんに絞れる。 店内ではオークションと知って、もう仔犬の購入を諦めて帰るお客さんも現れた。しかし、いつまでも仔犬を眺めている人もいた。そのなかでひとりの上品な白髪の婦人が、じっと仔犬を眺めて幸せそうに微笑んでいるのが印象的だった。 江美はこの仔犬を大切にしてくれる人に買ってもらいたいと願っていた。できれば購入してからも、しつけを通して仔犬と関わっていたいと思っていた。 オークションなら本当にこの仔犬がほしい人に購入してもらえるわけだが、ほしくてもお金に余裕がなくオークションに参加しても落札できない人もいる。 しかし、珍しいミニチュアダックスAZの仔犬は一匹だけだが、その他にも普通のミニチュアダックスの仔犬だと十万円くらいで購入できる。だから、お客さんに自由な選択をしてもらったらいいことだと、商売として割り切って考えるようにしていた。 店長の依頼通り一時間後ポスターは完成した。急いで店頭、入口付近、仔犬の柵の近く、そして二階と三階にも貼り出した。 このわんランドは、「笑顔」「親切」「丁寧」「迅速」をモットーに営業していた。江美や店長をはじめスタッフ全員がこのモットーをきっちり実践していたので、オープンしてわずか一年で、たくさんのお客さんから信頼されていた。 店長は来週の日曜日に開催される「わんランド感謝オークション」の企画を具体的に練り始めた。できるだけ楽しくお客さんに満足してもらえる内容にしてほしいとの、江美の強い要望に応えようと真剣に考えた。
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| 第一章 その8 |
大阪の街は桜が五分咲きになり、あちこちで花見を楽しむ人たちを見かける晴れやかな日曜日。 今日は楽しにしていた「わんランド感謝オークション」が開催される。わんランドの店内では午前八時からスタッフはオークションの準備に慌ただしく働いていた。 「杉田店長、おはようございます」 「おはようございます。江美ちゃん、里香ちゃん、どんべえ、今日はよろしくお願いします」 店長は額の汗を拭きながら言った。 「こちらこそ、よろしくお願いします」 と言った江美は、急いでミニチュアダックスAZの仔犬の側へ行った。 「今日の主役、名無しの仔犬ちゃんは元気かな……」 江美はこの仔犬が可愛くて仕方がない。今日でお別れになるから、なおさら愛おしく思っていた。「クーン・クーン」と、仔犬は江美の顔を見て甘えるように鳴いていた。どんべえもそれとなく感じているようで、寂しそうに柵の前でじっとお坐りして仔犬を見つめていた。 アシスタントの里香は、「わんランド感謝オークション」の司会をすることになっているので、少し緊張してソワソワしていた。いつもよりちょっと笑顔も少ない。 準備がすべて完了した午前九時半、正面入口を開けると、外で待っていたお客さんは笑顔で次々と入店して来た。 三十数名のお客さんがオークションに参加してくれるようだ。お客さんが立っているうしろにはテレビ、雑誌の報道陣が十数名も待機していた。 いよいよ午前十時。司会の里香はにこやかにマイクを持って、 「おはようございます。今日は早朝より大変お忙しい中、「わんランド感謝オークション」にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。今日はオークションを中心に楽しい企画もございます。最後までごゆっくりお楽しみください。では、はじめに杉田店長よりごあいさつがございます」 元気な司会に紹介された店長は、ミニチュアダックスAZの仔犬を両手で大切そうに抱いてマイクスタンドの前に立った。 まず参加者へのお礼からはじまり、購入からオークションに至るまでの経緯や仔犬の血統の説明。そして、オークションのルールの説明をした。 特にスタート価格は三十万円から、決済は現金またはカードでの即金であることを確認して、公平で有意義なオークションとなるようにスタッフ一同が全力で努めることを誓ってあいさつを終った。 堂々とした店長のスピーチに(さすがは父が認めただけある……)、(里香も笑顔で堂々とした司会だ……)と、上々の滑り出しに江美は満足した。
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| 第一章 その9 |
「只今より幸運をもたらす奇跡の犬、ミニチュアダックスAZのかわいい仔犬のオークションを開始します。それでは三十万円からスタートします」 司会の里香が元気に呼びかけると、川が堰きを切ったように、 「三十一万円」 「三十二万円」 「三十三万円」 「三十四万円」 「三十五万円」……と、若い女性や子連れの若い婦人が次々と一万円単位で入札していた。 すると、どこからか男性の太い声で「五十万円」と聞えた。 それからは「六十万円」「七十万円」「八十万円」……と、十万円単位で入札価格が上がり始めた。 初めに入札した若い人たちは黙り込んでしまい、ただ成り行きを見守るだけになった。 さらに「百万円」「百二十万円」「百五十万円」……と、うなぎ昇りに入札価格は上がり二百万円になったところで店内は一瞬、水を打ったように静かになった。 「お陰さまで入札価格は二百万円になりました。ありがとうございます」 里香がお礼を言うと、店内は少し騒然とした。里香は間髪入れずに、 「よろしければ、引き続き入札してください」 しばらく沈黙は続いたが……、 静寂を破って「二百五十万円」と、恰幅のいい壮年の低い声が店内に響い。みんなの視線は一斉にその壮年へ移った。 オークションに参加しいるほとんどの人はもう諦めて、かたずを呑んで見守っいた。 「二百七十万円」と、和服を着て髪をアップにした高級クラブのママのような女性がきれいな声で入札した。 みんなは一斉にその女性へ顔を向けた。 ひと呼吸おいて「すみません」と、うしろの方から上品な声がした、今度はみんな一斉に振り向いた。 その人は、お洒落な洋服を着た上品な白髪の婦人だった。その白髪の婦人は、 「三百万円」と、優しい声で入札した。 江美は見覚えのある婦人だな……と思ったが、すぐ思い出した。それは、先週の日曜日に柵の前でじっと仔犬を見て微笑んでいた白髪の婦人だった。 すかさず、先程入札した恰幅のいい壮年が「三百五十万円」と力強く言った。 突然、「さんびゃくろくじゅうえん」と小さな女の子のかわいい声が店内に響いた。店内から爆笑が巻き起こり、緊張した雰囲気が少し和らいだ。
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| 第一章 その10 |
笑いもおさまって静かになった時、「四百万円」と、高級クラブのママのような女性が言った。 すると店内のみんなは、先程入札した白髪の婦人をじっと見つめて、次の入札を待っていた。しかし、白髪の婦人は黙って天を仰いでいるだけだった。 それを確認した里香はさわやかな口調で、 「只今、四百万円になりました。誠にありがとうございます。もう、入札がございませんでしたら、これで落札したいと思いますが、いかがでしょうか?」 「ちょっと待ってください」 白髪の婦人が慌てて、 「五百万円でお願いします」 とキッパリ言った。店内から「ええっ」と、驚きの声があちこちで洩れた。 しばらく会場は騒然となった。 里香は会場を見渡しながら静かになるのを待っていた。突然、 「六百万円」と、叫ぶような声が店内に響き渡った。会場は「うぉー」と、驚愕の声がこだました。 誰が六百万円を入札したのかと、場内の視線は叫び声の方へ移った。その人は入札を競っていた恰幅のいい壮年だった。 みんなは期待して、白髪の婦人と高級クラブのママのような女性をジロジロと見つめた。二人とも沈黙して首をうな垂れ、もう諦めているようだった。 そんな空気を察知した里香は大きな声で、 「それでは六百万円で落札いたします。よろしいでしょうか?」 里香は、誰か入札するかもしれないと期待を持って訊ねたが、誰も他人事のような顔をして立っているだけだった。 商売熱心な店長は(六百万円か、三百万円も儲かる……)と、込み上げてくる喜びを腹で笑って、冷静を装っていた。 決断した里香は元気に、 「では、六百万円で落札します」 机をポンと叩いて叫んだ。そして、 「誠にありがとうございました。これでオークションを終了いたします」 と言って拍手をした。緊張の糸が切れたようにホッとした参加者から大きな拍手が起こった。 店長は(やった! 三百万円も儲かった)と、こぼれる笑顔を抑えきれず、落札した恰幅のいい壮年にペコペコしながらお礼を言って、売買契約と決済をしてもらうために三階の事務所へ案内した。 入札を競って落札できなかった白髪の婦人は、落札された仔犬の柵の前にしゃがみ込んで悲しそうに涙を流してじっと仔犬を見ていた。 それを眺めていたどんべえは、その白髪の婦人にそっと近づき慰めるように「クーン・クーン」と、鳴きながらカラダをスリ寄せた。 このあと店内では楽しいドッグショーとユニークな賞品がもれなく当るビンゴゲームが予定されていた。
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| 第一章 その11 |
事務所では杉田店長と江美が、前に礼儀正しく坐っている壮年と仔犬の話をしながら、売買契約の手続きを始めた。 「重ねて落札いただいて、誠にありがとうございました」 店長は丁寧にお礼を言った。すると壮年はゆったりした口調で、 「いえいえ、六百万円くらい私の小遣いですから」 (まぁ……嫌味なおじさんだわ)江美はそう思った反面うらやましく、(ウチも一度でいいから六百万円くらい小遣いですって言ってみたいわ)などと思いながら、契約を見守っていた。 「六百万円の決済でございますが、現金かカードでお願いいたします」 店長は丁重に訊ねると、壮年はセカンドバックからクロコダイルの財布を取り出し、そして、アメックスのゴールドカードをテーブルに置きながら、「これで……」と呟いた。 「誠にありがとうございます。只今カード会社と手続きして参りますので、しばらくお待ちください」 江美はコーヒーを壮年にだして、犬のしつけの話をしていると、店長が戻ってきて、 「お客さまたいへん失礼ですが、このカードはご利用できないそうなんです」 壮年は顔色ひとつ変えず、 「おかしいですね。そしたらこちらのゴールドカードで」 と言って、財布から取りだして店長へ渡した。 しばらくすると戻ってきた店長が、このゴールドカードも利用できないことを告げると、壮年は困った表情をして言った、 「おかしいですな……そしたら小切手ではいけませんか?」 店長は笑顔が消えて困った表情になった。それを感じた江美は、 「小切手でも結構ですよ」 「それは、ありがたいです」 と、壮年が言いかけた時、江美は言葉を続けて、 「ただし、身元を証明するものを見せていただけますか。例えば、自動車免許証や健康保険証またはパスポートのいずれかお持ちではないでしょうか?」 頷いた壮年はセカンドバックの中をのぞいて、 「あいにく今日は日曜日なので、持ってきていませんね……」 そう言った時、江美は「しまった」と思った。 江美は、店長に耳打ちすると静かに席を立って事務所をでた。と、同時に猛スピードで階段を駆け降りた。 そして、ドッグショーの進行をしている、里香に耳打ちした。今度は階段を駆け上り三階の事務所の扉を静かに開けた。 すると、壮年の態度は豹変していた。壮年は膝を組んでのけぞって、たばこを吹かしながら偉そうに坐っていた。 「江美ちゃん、お客さまはもう決済はできないから、落札はなかったことにしてくれって言うんです」 杉田店長は困った顔をして言った。すると江美は笑みを浮かべながら壮年を見つめ、 「それは結構ですが、ルール違反ということで罰金十万円をいただきます」 「そんなルール……知らん」 壮年は天井を仰いで言葉を投げ捨てた。
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| 第一章 その12 |
「オークション開始の時、妨害する入札や落札は禁止だと確認したはずです。この案内状の注意事項にも罰金のことを大きく書いてあるではないですか」 江美は、案内状を見せて厳しい口調で詰め寄った。 「まあ、そうガミガミ言うなよ……そろそろ帰るか」 壮年はそう言って、江美を睨みつけて立ち上がった。そして事務所をでて行こうとした。すると、店長は飛んで行って壮年を制止したが、もの凄い力で突き飛ばされて尻もちをついてしまった。 江美は目にも止まらぬ早さで壮年の背後から右腕を捻じ上げた。 「痛ったた、こら……放せ……」 壮年は悲鳴をあげながらもがいたが、もがくほど痛くなるので静かになった。江美は壮年をソファーに無理やり坐らせ、人差し指で壮年の首のツボを鋭く突いた。「ウッ」と呻いた壮年の動きが止まった。 手も足も金縛りにあったように動かない。ただ目と口だけは動いていた。すかさず江美は壮年に詰問した。 「なぜ? オークションの妨害をしたの?」 「ん……」 「なぜなの?」 目だけが天井を見つめ黙っている壮年にもう一度、詰問した。 「知らん」 それを聴いた江美は目を閉じた。そして、静かに両手を合わせて合掌した。壮年は顔も動かすことができないので、ただ江美の不思議な動作を見つめていた。 突然、江美は「パッ」と目を開けた。江美の大きな瞳はキラキラと輝き壮年の目を釘付けにした。 ……そのまま三分間が経った。 すると壮年の目は血走ってとろんとしていた。 これぞ、くノ一忍法「赤ちゃんの術」。これは催眠術で赤ちゃんのように心が素直になって、何でも正直に話すという江美の得意技であった。 江美は赤ちゃんに話しかけるように優しく、 「ねえ、ぼくちゃんどうしてイタズラしちゃったの?」 「あのね……たのまれたの」 「そうなの、だれにたのまれたの?」 「あのね……おっぱいの大きなおねえちゃんに」 「ふーん、おっぱいすきなの?」 「うん、だいすきだよ。おねえちゃんのおっぱいも大きいね」 「こら、さわったらだめだよ。ぼくちゃんエッチだね」 「ええ……エッチってなに?」 「ごめんね、変なこときいて」 「うん、いいよ」 「おっぱい、おいしい?」 「うん、めっちゃおいしいよ」 江美は、ちょっと壮年をからかって「クス・クス・クス」と、へそから茶を沸かしながら話しを続けた。
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