それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第五章 その1
 翌朝十時、いつもより早起きした沙也加は、赤いジャージ姿で自転車に乗って、近くのペットショップ店へ、仔犬のために色々揃えるものを買いに行った。首輪、リード、簡易トイレ、ドックフード、ビーフジャッキーやおもちゃなど思いつくまま購入した。
 自宅へ帰った沙也加は大きな袋を両手にかかえて、こっそり階段を上がって二階にある自分の部屋に入った。バスタオルにくるまった仔犬を見ると、ぐったりして疲れているようだった。昨日の豪雨のなかを歩き回って体が冷えたのかもしれない。沙也加は小さな美しい手の平で仔犬の頭を優しく撫でながら、
「わんチャン、大丈夫? しんどいの?」
 と、ささやいた。
 仔犬は沙也加の顔をじっと見つめていた。
(なんて愛らしいわんチャンかしら……)と、思いながら、買って来た仔犬用のドックフードを容器に入れて、「待て」と言いながら置くと、仔犬はゆっくりお坐りして尻尾を振った。「よし」とささやくと、仔犬は大喜びして食べ出したので、沙也加は少しホッとした。
 大国町の外れにある沙也加の自宅は古い二階建ての小さな家だった。家族は母親と祖母の三人暮らし、父は一年前、小さな事業が失敗して七百万の借金を残して家出してしまった。その借金は小さなサラ金業者からのものばかりで取り立てが厳しく、たちまち家族は借金地獄に落とされた。
 おまけに母親は病弱で家事をするのがやっと、とても働きに行ける体力はなかった。祖母も高齢であっちこっちが痛いと言っては病院に通っていた。
 父が家出したのは、沙也加は短大を卒業して信用金庫に就職した矢先だった。月々の借金返済が三十万円ということで、とても信用金庫の給与では生活できない状況になってしまった。
 沙也加は悩んだ末、自分の力でなんとしても借金を返済し、母親と祖母を安心して暮らせるようにしたいと考えた。
 沙也加は高校時代の親友に、どうしたら六十万円以上稼げるか相談した。
 親友の祐子は、沙也加の事情を聞くと驚いて、
「そんなお金稼ぐの普通の会社なら不可能だよね……どうしたらいいかな」
 と呟きながら考え込んだ。
 すると、沙也加は冗談でも言うように、
「風俗でもしないと駄目かなぁ……」
「えっ、沙也加そこまで考えているの……」
 祐子は少し驚いたように言ってから、
「キャバクラだったらそれくらい稼げるんじゃない」
 と、勧めてくれたが、沙也加は見かけは派手に見えるが内向性だから、お店で知らない男性と気の利いた会話を何時間もすることは、とてもできないと考えていた。
「私、そんなちゃらちゃらした会話するの大嫌いなの」
「沙也加の性格よくわかってるけど、それしかないのと違う……?」
 祐子は表情を曇らせて訊ねた。

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