それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第一章 その8
 大阪の街は桜が五分咲きになり、あちこちで花見を楽しむ人たちを見かける晴れやかな日曜日。
 今日は楽しにしていた「わんランド感謝オークション」が開催される。わんランドの店内では午前八時からスタッフはオークションの準備に慌ただしく働いていた。
「杉田店長、おはようございます」
「おはようございます。江美ちゃん、里香ちゃん、どんべえ、今日はよろしくお願いします」
 店長は額の汗を拭きながら言った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 と言った江美は、急いでミニチュアダックスAZの仔犬の側へ行った。
「今日の主役、名無しの仔犬ちゃんは元気かな……」
 江美はこの仔犬が可愛くて仕方がない。今日でお別れになるから、なおさら愛おしく思っていた。「クーン・クーン」と、仔犬は江美の顔を見て甘えるように鳴いていた。どんべえもそれとなく感じているようで、寂しそうに柵の前でじっとお坐りして仔犬を見つめていた。
 アシスタントの里香は、「わんランド感謝オークション」の司会をすることになっているので、少し緊張してソワソワしていた。いつもよりちょっと笑顔も少ない。
 準備がすべて完了した午前九時半、正面入口を開けると、外で待っていたお客さんは笑顔で次々と入店して来た。
 三十数名のお客さんがオークションに参加してくれるようだ。お客さんが立っているうしろにはテレビ、雑誌の報道陣が十数名も待機していた。
 いよいよ午前十時。司会の里香はにこやかにマイクを持って、
「おはようございます。今日は早朝より大変お忙しい中、「わんランド感謝オークション」にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。今日はオークションを中心に楽しい企画もございます。最後までごゆっくりお楽しみください。では、はじめに杉田店長よりごあいさつがございます」
 元気な司会に紹介された店長は、ミニチュアダックスAZの仔犬を両手で大切そうに抱いてマイクスタンドの前に立った。
 まず参加者へのお礼からはじまり、購入からオークションに至るまでの経緯や仔犬の血統の説明。そして、オークションのルールの説明をした。
 特にスタート価格は三十万円から、決済は現金またはカードでの即金であることを確認して、公平で有意義なオークションとなるようにスタッフ一同が全力で努めることを誓ってあいさつを終った。
 堂々とした店長のスピーチに(さすがは父が認めただけある……)、(里香も笑顔で堂々とした司会だ……)と、上々の滑り出しに江美は満足した。

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