それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その10
「実は昨日、私の親友から仔犬の新聞広告の話を聞いたので、写メールで送ってもらって確認したら間違いなく、その仔犬と思ったんです。しかし連絡しようかすごく悩んで、今朝やっぱり連絡しようと決めていたんです。ですが、仔犬の光チャンはすごく家族に懐いているんです。光チャンがここに来てからお母さんとおばあちゃんがよく笑うようになって少しづつ元気になっているんです」
 奥さんは親身になって頷いていた。そして、
「お母さまとお婆さまは体が悪いのですか?」
「ええ、二人とも父のために心労が重なり体調を壊しているんです。母はまだ若いんですけど、とても働ける体力がないんです。だから、私ひとりが働いて家族を養っているんです」
「そうなんですか、ご苦労されているんですね。立ち入ったこと訊ねて申し訳ないんですが、もし差し支えなかったらお父様はどうされているんですか?」
 奥さまは遠慮気味に訊ねた。すると沙也加は、
「父は事業を失敗して借金を残して家出したんです」
「まあ、大変なんですね……」
 奥さま同情して悲しい表情になっていた。
「私の言いたいのは、家族を明るくしてくれる光チャンと一緒にいたいんです」
 と言って沙也加は泣き出してしまった。
 すると母親も一緒に泣き出した。
 大沢夫妻と江里は困惑した表情をして、しばらく黙っていた。
 この空気にたまりかねた里香は、
「実はね、沙也加さん。この仔犬は世界でも珍しい『幸運をまねく奇跡の犬』なんです。この犬が家庭にいると家族が元気になってどんどん栄えていくんですよ」
 と正直に説明した。
 しゃくりながら沙也加は、
「えっ、『幸運をまねく奇跡の犬』。そう言われると、本当にそうだと思います」
「だから、大沢ご夫妻も仔犬をすごく大切にされていたんです。沙也加さんのお気持ちはすごくわかるけど、どうか快くお返ししてもらえないでしょうか?」
 里香は仲介者の立場としてそう言わざるを得なかった。
「はいっ! わかりました。光チャンを起こして連れてきます」
 素直に納得した沙也加は二階へ上がった。
 しかし江美は、今ほんとうにこの仔犬が必要なのは大沢夫妻より沙也加の方だと心から思った。健気な沙也加の態度に深く感動して、何とかしてあげたい気持ちが込み上げて来た。
 しばらくすると沙也加は光チャンを抱っこして降りて来た。
「ラッキー、会いたかったわ」
 沙也加から受け取った奥さまは泣きながらラッキーを抱きしめた。
 大沢は深々と頭を下げて、
「本当にありがとうございました。心から感謝いたします。少ないですが礼金として百万円を受け取ってください」
 大沢はカバンから取り出してテーブルの上に置いた。

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