それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その9
 午後十一時半、江美は里香とどんべえを伴って大沢邸へ迎えに行くと、夫妻で行くことになった。車中で大沢は江美に心から感謝していると言って、何度も頭を下げていた。
 当時は欲にかられて見境なく非人間的な行為をしていたことに、今となっては恥ずかしくて心から反省している。逮捕された元社長の城田に対して酷いことをして本当に申し訳なく思っている。城田の今後は責任を持って対応したい。また、罪が軽くなるよう弁護士にお願いしているとも語った。
 午前十二時過ぎ、高橋宅へ訪問するとすでに娘の沙也加が帰宅していた。
「こんばんわ、どうぞむさ苦しいところですが上がってください」
 母親に勧められて三人は六畳の和室に坐った。どんべえは玄関先で賢くお坐りしていた。
「沙也加、わんランドの服部江美さんが来られましたよ」
 母親は階段から二階へ大きな声で呼んだ。
 しばらくして沙也加は降りて来た。
「こんばんわ、始めまして娘の沙也加です」
「始めまして、私はペットショップわんランドの服部江美、こちらは仔犬の持ち主の大沢ご夫妻です」
 江美が紹介すると、大沢の奥さまが、
「沙也加さんこの度は、仔犬の命まで救っていただいて大変ありがとうございました」
 大沢も一緒に深々と頭をさげた。
 すると沙也加は、
「なぜ、ここがわかたんですか?」
 ちょっと不満そうな表情で言った。
「実は、そこにいるどんべえが仔犬とあなたを見付けたのよ」
 江美は玄関先のどんべえを指差して言った。
 それを見た沙也加は驚いて、
「あっ、昼間公園で出会ったわんチャンね」
 すると、どんべえは「ワン」と鳴いた。
「えっ、人間の話がわかるんですか?」
 沙也加は驚いて訊ねると、またどんべえは「ワン」と鳴いた。
 驚いている沙也加と母親に、江美はこの犬は忍者犬で人間の言葉がわかるんですと説明した。
 すると、沙也加と母親は目を合わせて「えっえっ」というような奇妙な表情をした。
「忍者犬どんべえ、ですか?」
「そうです。忍者村伊賀で厳しい修業をした忍者犬なんです」
 江美はきっぱり言った。
「ところで、沙也加さん仔犬のラッキーはどこにいるんですか?」
 と、心配そうに奥さまが訊ねた。
「今、二階で寝ています。連れて来る前に言って置きたいことがあるんですが……」
「何でしょうか?」
 奥さまは表情を曇らせて訊ねた。

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