それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その8
「実は、ミニチュアダックスの仔犬のことなんです」
「ああ、光チャンのこと……が、どうしたの?」
「えっ、光チャンって?」
「ミニチュアダックスの仔犬のことよ」
「あっ、すみません。で、その光チャンをちょっと見せていただけないでしょうか」
 江美が訊ねると母親は気さくに、
「いいですよ、むさ苦しいところでよかったら、どうぞなかへ入ってください」
 江美は遠慮して玄関先でいいですから、ちょっと見せてもらうだけでと言った。
 母親は気さくに奥から光チャンを連れて来た。すると、光チャンは尻尾を振って大喜びした。
 怪訝に思った母親は、
「あれ、服部江美さんは光チャンを知っているんですか?」
「ええ、実はこの仔犬は誘拐されたんです」
 と言い終わらないうちに、母親は驚愕して、
「まさか、うちの娘が……」
「いいえ、誘拐されてから逃げて迷子になってしまったんです」
「そうなんですか。実は二週間くらい前の豪雨の時、この光チャンが死にそうになっていたところを娘が助けたんですよ」
「そうだったんですか。本当にありがとうございました」
「いいえ、とんでもございません」
「実はこの前、新聞広告に仔犬のことを載せて、礼金として百万円をお渡しすることになっているんです」
「えっ、百万円」
 母親は驚いて叫んだ。そして、
「新聞を取ってないもんですから、まったく知りませんでした」
「そうだったんですか……で、娘さんは?」
「今、仕事に行っています。帰って来るのは午前十二時くらいと思うんですが」
「そうなんですか、助けてもらった娘さんにお礼も言わずに、仔犬を引き取る訳にはいきませんので、午前十二時頃、こちらへお邪魔してもいいでしょうか?」
「そんな遅くにいいんですか?」
「ええ、そちらさえよろしければウチは構いません」
「わかりました。そのように娘に伝えておきます」
 丁重にお礼を言って高橋宅を出た江美は大喜びして、大沢の奥さまに電話してこの状況を伝えると、
「良かった……江美さん、本当にありがとうございました」
 奥さまは涙声で感激しているのがよくわかった。
「遅いですけど午前十二時は奥さまはどうされますか?」
「もちろん、一緒にお邪魔させてください。礼金もその時お渡ししますから」
「そうですか、そしたら午後十一時半にそちらへお迎えに参りますので、よろしくお願いいたします」
 奥さまは何度も受話器にお辞儀をして、静かに電話を切った。

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