それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第一章 その6
 それを見たお客さんは次から次に店長のところへ訊きにきた。店長は嬉しいような、困ったような複雑な気持ちになって、
「江美ちゃん、この状況で仔犬を販売したら掴み合いの喧嘩になって暴動が起きそうです。どうしたらいいでしょうか?」
 江美は苦笑しながら、
「杉田店長、それはちょっとオーバーじゃない」
「でも、そんな空気を感じるんです……」
「そうね、この状況で誰かに販売したら、それに近い不満が爆発するかもしれないわね」
 江美はそう言って、店内をさっと眺めながら、
「ほんと凄い人ね、今でも二百人はいるわ。困ったわね……」
 と言って表情を曇らせた。
「何かいい方法ないかなぁ……」
 店長は腕組みして呟いた。
「ねえ、里香ちゃん、いいアイディアないかしら?」
 江美は側にいたアシスタントの里香へ訊ねた、
「そうね……ジャンケンでもしたら……?」
 里香は自信なさそうに小声で言った。
 アシスタントの木村里香は短大を出て大好きな犬に関連した仕事がしたくて、わんランドのオープン時に入社した。いつも笑顔で心の優しい女性だからスタッフに好かれ、犬にもよく懐かれていた。今では江美の秘書兼アシスタントとして頑張っていた。
「でも、これからお客さんはどんどん増えます。ジャンケンで決めてしまったら、あとからいらっしゃったお客さんがガッカリするんじゃないですかね……」
 店長は不満そうに言った。すると里香は、
「じゃあ、抽選ではどうかしら?」
「抽選……悪くはないですね……」
 じっと目を閉じて考え込んでいた江美はパッと目を開いて、
「そうだ! いい考えがあるわ!」
 ビックリするような大きな声で叫んだ。
「江美ちゃん、いいアイディアありましたか?」
「あるわよ。今、流行っているじゃない」
「えっ、流行っているもの……?」
 店長は首を傾げて呟いた。江美は満面に笑みを浮かべて、
「それはね、オークション!」
 と、自信満々に言った。
「オークション、それはいい考えですね」
 ポッンと手を叩いて、店長は賛同した。
「江美さん、里香も賛成です。オークションならお客さんも納得してくれるそう。で、いつするんですか?」
「来週の日曜日がいいと思うけど……杉田店長はどうですか?」
「いいんじゃないですか」
「じゃあ、決定ね」
 江美は店長を見つめてとろけるような笑顔でピースサインをした。

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