それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その7
 公園に入ると甘いジャスミンの香りが鼻を撫でた。植え込みには濃いピンクのつつじの花が満開に咲いていた。光チャンは草や土の匂いを嗅いたり、おしっこをしたりして大喜びしている。
 歩きながら沙也加はしみじみ考えた。嵐のような一年が過ぎ、あと半年もすれば借金の返済も終わる。カラダは汚れても洗い流したら綺麗になる。しかし心まで汚れたら取り返しがつかない。光チャンのことを知った以上は、きっちりしてあげないと自分自身が駄目になるような気がした。
 遠くから黒い雑種のおもしろい顔をした犬が近づいて来た。野良犬かと思った沙也加はまったく知らないが、その犬はどんべえだった。どんべえは尻尾を激しく振りながら「クン・クン」と鳴きながら、光チャンに近づいた。すると、光チャンは大喜びしてどんべえに戯れついた。
 その光景を見ていた沙也加は首を傾けて(なんで……こんなに喜ぶのだろ?)と、不思議に思った。
 沙也加は出勤時間が迫ったので急いで公園を出て自宅へ向かった。
 うしろから尻尾を振りながらどんべえが付いて来ていた。(おかしな犬だわ……)と思いながら自宅へ光チャンを入れて、早足で歩いてタクシーを拾って遊廓へ向かった。
 どんべえは大喜びしてペットショップわんランドの江里の元へ疾走した。しばらくして、ハアハアしながら江里のところへやって来たどんべえは、
「ワン・ワン・ワン……ラッキーみつかったよ」
「えっ、見付かったの、よくやったわね」
 江里はどんべえの頭を優しく撫でながら、
「で、どこにいるの?」
「クン・クン……ぼくについてきてよ、おしえるから」
「わかったは、さあ行きましょう」
 江里はワゴン車に飛び乗り走り出した。
 どんべえは歩道を走ってワゴン車を誘導した。しばらく走って大国町の外れでどんべえは止まった。
 ワゴン車を近くの駐車場に止めて、どんべえのあとを歩いた。数百メートル歩くと古い二階建ての家の前でどんべえはお坐りした。
「どんべえ、ここなの?」
 どんべえは頭を上下に振って答えた。
「こんにちは、おじゃまします」
 江美は玄関の引き戸を少し開けて大きな声で言った。
「はい、どちら様ですか?」
 沙也加の母親がかすれた声で訊ねた。
「私は、ペットショップわんランドの服部江美と申します。突然で失礼とは存じますがちょっとお訊ねしたいことがあって寄せていただきました」
「ペットショップの……服部江美さん? 何でしょうか?」
 母親はちょっと首を傾げて訊ねた。

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