それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その6
「そうよ、だから相当大切な仔犬だなと思って、印象に残っているの」
「ねえ、祐子どうしたらいいかな?」
「確か、連絡先も書いてあったと思うけど……、思いだせないわ。それか警察に届けでするかよ」
「でも……光チャンすごく懐いてくれて、めちゃかわいいから……」
「沙也加、何を考えているの? もしかして……」
 祐子は沙也加の大きな瞳を見つめて言った。
 すると沙也加は、
「そう。知らなかったことにすれば、どうかしら?」
「えっ、まだそうだとは決っていないんだから、連絡だけでもしてみたら。もし、そうだったら百万円貰えるんだよ」
 祐子は真剣な表情をして応えた。
「今は、百万円より光チャンの方がいいもん」
「えっ、百万円よ」
「だって、光チャンが家に来てから、お母さんとおばあちゃん明るくなって少し元気なったように思うもん」
「そうなの……」
「ねえ、祐子。その新聞広告を写メールで送ってくれない。それを見てじっくり考えさせてほしいの」
「わかった。家に帰ったらすぐ送るからね」
 祐子はそう言って、しばらく雑談して自宅へ帰ると、さっそく新聞広告の写メールを沙也加に送信した。
 沙也加は送られてきた写メールを拡大しながら読んだ。小さな仔犬のモノクロ写真も載っていた。側で寝ころんでいる光チャンと写真を見比べるとやはり光チャンそっくりだった。連絡先はペットショップわんランドの電話番号が書いてあった。
 沙也加は連絡しようか迷いながら、じっと光チャンを眺めている沙也加の目から涙が流れた。とりあえず一晩考えてから、明日結論をだそうと思った。
 翌朝、沙也加は顔に快感が走って目を醒ました。気がつくと光チャンが小さな舌でペロペロ舐めてくれていた。沙也加は優しく「光チャンおはよう」と声をかけると大喜びして戯れついた。
 沙也加は光チャンが愛おしくてたまらなくギューと抱きしめた。(でもやっぱり、連絡して持ち主に返してあげよう)と、思ったら涙が止まらなくなった。
 しばらくして、光ちゃんと一緒に浴室に入って全身をきれいに洗ってあげた。浴室から出て光チャンをバスタオルで拭いてあげると、大喜びして狭いキッチンへ行って食事を作っていた母親の足元で戯れ回っていた。
 そして、祖母のところへ走って行って戯れついていた。祖母はこぼれるような笑顔で光チャンと遊んでいた。
それを眺めていた沙也加は、喉まで出かかっていた新聞広告の話ができなくなった。
 昼過ぎ、沙也加は出勤前に初めて光チャンと近くの公園に散歩へ行った。もう光チャンとお別れだと思うのだが、家族のことを考えると諦めきれない。悶々とした気持ちを振り払うために一緒に散歩がしたくなった。小さな白い雲がゆっくり流れる青空は、沙也加の心と正反対のように爽やかだった。

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