それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その4
 ラッキーが誘拐された日から一週間が過ぎた。テレビのニュースも効果はなく、警察にはまったく目撃情報は入ってこなかった。警察官の中村と鈴木は誘拐犯を逮捕したことで役目は終わっていた。しかし、時間をつくってラッキーの捜査をしてくれていた。
 江美もお婆さんに変装して、どんべえと一緒に何度か新世界やあいりん地区周辺を捜査していたが、煙のように消えてしまったラッキーを捜し出すことはできなかった。
 大沢邸の奥さまは、ラッキーがいなくなってから寂しい日々を過ごしていた。しかし毎日、近所のかわいい子どもたちがラッキーを心配して訪ねてくれていた。子どもたちと話することが寂しさを紛らすせめてもの救いだった。
 夕方、仕事から帰って来た大沢は元気のない妻の姿を見て、
「純子、顔色が悪いなぁ、ほんま大丈夫か?」
「ええ……大丈夫よ。でも、ラッキーがどうしているか考えるだけで心が痛むんです」
「そうか、俺のせいでこんなことになって申し訳ない」
 大沢は初めて妻に頭をさげた。
 城田が逮捕されて参考人として警察に行ってから、人が変わったように優しくなってきていた。
 妻は慌てて、
「あなた、私が不注意で誘拐されたんですから、こちらこそ申し訳ございませんでした」
 主人の優しさに感激しながら謝った。
「なあ、純子。新聞広告にラッキーのこと載せようか、礼金を百万円くらいつけたら少しは効果あるんじゃあないかと思っているんだ」
「えっ、そこまで考えてくれているんですか?」
「うん。純子が俺の健康を願って買ったラッキーだから、俺も純子の誠意に応えたいんだ」
「あなた、ありがとうございます」
 妻は咽び泣きながら感謝した。
 二日後、四紙の大阪版の新聞に「仔犬を捜してください」のタイトルで行案内広告が載った。
 その広告を見た江美と里香は祈るような気持ちで情報を心待ちにしていた。礼金百万円の効果もあって、さまざまな情報が連絡窓口に寄せられた。
 しかし、残念ながら有力な情報は何ひとつなかった。
 江美は最後の望みをかけてどんべえに新世界やあいりん地区以外の周辺地域を捜査するように指示した。どんべえは早朝か夜遅くまで毎日、日課のように捜査に走り回っていた。
 ある日の夜八時頃、どんべえは悲しい顔をしてペットショップわんランドへ帰って来た。
 それを見た江美は、
「どんべえ、お疲れ様。あら、どうしたの元気ないじゃあないの?」
「クン・クン……ラッキーどこにいるのか全然わからないんだ」
「公園はもちろん回ってるわよね」
「ワン……公園を見付けたら隅々まで匂い嗅いてるんだよ」
「でも、わからないのね。ほんとおかしいわね」
「クン・クン……散歩に連れて行ってもらっていないのかなぁ」
「そうね、きっと散歩に行くこともあると思うんだけど……」
「ワン……そうだよねきっと散歩するよね」
「ねえ、どんべえ。大変だけどもうちょっと続けて捜査してね」
「ワン・ワン」
 江美は優しくどんべえの頭を撫でながら、好物のビーフジャーキーを口の中に入れてあげた。

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