それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第五章 その3
「そうよ、最近は繁盛していて建物も綺麗になっているんだって」
「私、雑誌で見たことあるわ。エイズや性病の検査も厳しいって書いてあったわ」
 と、沙也加は大きな瞳を輝かせて言った。
「会社の先輩も言ってたわ、コンドームするから衛生的だって」
「ふーん、そしたらうつされる心配もないわね」
「そうよ、会社の先輩は安心して欲求不満を解消できるって喜んでいたわ」
「ふーん、男性に喜んでもらえる仕事なんだね」
 沙也加はこぼれるような笑を浮かべた。
 そんなことで、一年前から沙也加は飛田遊廓で働くようになった。
 今では稼ぎが良く、すでに借金は半分以上返済していた。しかし、こんな状況の生活だから、沙也加は仔犬を連れて帰って来たことを家族に言いにくかった。
 仔犬を飼うなんて、生活に余裕のある人たちのすることだと、うしろめたい気持ちもあったからだ。
 食事を済ませた仔犬は少し元気になって部屋をウロウロしながら「クン・クン」「ワン・ワン」と鳴いて、沙也加をハラハラさせた。
 しばらく考え込んだ沙也加はいつまでも仔犬を隠し通せる訳でもないと観念して、仔犬を抱いて階段を降りた。
「ねえ、お母さん、仔犬飼っていい?」
「あら、沙也加その仔犬どうしたの?」
「昨日、働きに行く途中で雨に濡れて死にそうになっているところをかわいそうだから助けてあげたの」
 沙也加はちょっとオーバーに言ったが嘘ではなかった。
「そうなの、沙也加が飼いたいなら、お母さんはいいですよ。ねえ、おばあちゃんもいいわね」
 横になっていた祖母に母親は訊ねると祖母は小さく頷いた。
 母親と祖母は沙也加が愚痴も言わず家族のために一生懸命に働いてくれることに心から感謝していたので、沙也加の好きなようにさせてあげたかった。
「沙也加、ちょっと仔犬だっこさせてよ」
 母親はこぼれるよな笑顔で仔犬を抱いた。
 沙也加はこんな笑顔の母親の顔を久しぶりに見て嬉しかった。
「わあー、すごくかわいい仔犬だわね……」
 母親は仔犬に頬ずりしながら嬉しそうに笑った。
「ねえ、お母さん、このわんチャンは雄なんだけど名前なんてつけようか?」
「そうね、こんなに毛がキラキラ光っているから……『光(こう)チャン』はどうかしら」
「『光チャン』か、いい名前だわ。じゃあ決定するね」
 沙也加は可愛く微笑んで、光チャン、光チャンと何度も仔犬に呼びかけた。光チャンは尻尾を振って大喜びしていた。

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