それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その11
 ラッキーがそんなことになっているとは知らない江美たちは、ラッキーの手掛かりさえ見付けることもできず、がっかりしながら午後八時に捜索を打ち切って解散した。その頃にはすっかり雨もあがり夜空には星が瞬いていた。
 江美と里香は急いで大沢宅を訪れた。
 心配していた奥さまに今日の状況を詳しく話すると、落胆して涙を流しながら、
「誘拐犯は捕まっても、ラッキーがいなかったなんてすごくショックだわ」
「ええ、ウチもショックです」
「江美さん、ラッキーは大丈夫でしょうか?」
「ええ、きっと大丈夫ですよ。誰かに救われたんじゃあないかと思います」
「そうだったらいいんですが……」
「奥さま、ラッキーが誘拐されて逃げ出したことをテレビのニュースで取り上げてもらうように、杉田店長に頼んでみます」
「テレビのニュースで放映……?」
「ええ、前回も幸運をもたらす奇跡の仔犬として放映されたんです。それからオークションも少し紹介してくれたんですよ。だから、そのテレビ局にお願いすれば、きっとニュースで取り上げてくれると思いますよ」
「そうだったんですか。すべて江美さんにお任せしますから、よろしくお願いいたします」
「わかりました。ちょっと失礼して店長に電話してきます」
 しばらくして、おそらく深夜か明日の朝には、ニュースとして扱ってくれるだろうと店長から連絡があった。江美はラッキーが帰って来るかもしれないと思い、奥さまに庭の照明を一晩中灯してください。とお願いしした。そして、ちょっと躊躇って、
「実は誘拐犯のことなんですが、ご主人をすごく恨んでいる壮年だったんです」
「えっ、主人を恨んでいる?」
「ええ、犯人はソフト開発会社の元社長の城田幸雄というんです。ご主人が半年前にその会社を買収したんですよ。その状況を詳しく調べたところ、どうもご主人が城田を騙して乗っ取りをしたような事実があるんです」
「えっ、騙して乗っ取りを……。それで……」
 奥さまは青ざめた顔になって呟いた。すかさず江美は、
「奥さま、それで……ということは、何か心当たりがあるんですか?」
「ええ、主人は半年くらい前から夜も熟睡できなくなって体調を崩し、人が変わったように無口になってしまったのよ。私は心配で心を痛めていたところ、仔犬のことをテレビで知ってペットショップわんランドへ行ったのよ」
 奥さまは小声でささやくようにそう言った。
「そうだったんですか。それでご主人の健康が気になるとおっしゃていたんですか」
 江美は同情するように表情を曇らせた。
「ねえ、江美さん。主人は逮捕されるんでしょうか?」
「そこまでは、ウチもわからないです。しかし、二・三日後には参考人として呼ばれるんじゃないかと思います」
「そうなんですか……」
「きっと、ご主人も城田さんと会って話しをすれば後悔すると思いますよ」
「そうだと、いいんですが……」
「奥さま、ご主人にこれだけは伝えてください。『他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはしない』って」
「『他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはしない』ですね、ありがとうございます」
 奥さまは感激して涙を流しながら深々と頭を下げた。

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