それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その9
 鈴木は平気な顔をしていたが、里香はむかついて仕方がなかった。
「ねえ鈴木君、今のお客さんの言葉に腹立たないの?」
「別に何とも思わないよ」
「えーえ、だってあきらかに軽蔑したような言葉でしょう」
「世の中には、警官を馬鹿にしたり毛嫌いしたりする人も結構いるんだよ」
「ふーん……」
 里香はそれでも納得できない表情をして呟いた。
「僕も警官になりたては里香ちゃんのように怒ったけど……、いちいちそんな言動に怒っていたら切りがないと思い直したら、もう平気になったんだ」
「そうなんだ」
「里香ちゃん、もうパチンコ店での聞き込みは止めようか?」
「えっ、どうして?」
 里香が訊ねると、鈴木はお客さんはパチンコに夢中で、他人のことには関心がないような人が多いから……。とりあえず、新世界の街を巡回しながら捜索した方が効率がいいと思う、と答えた。
「そうね、里香も同感だよ」
 同年代の二人は何かと相性が合った。まるでデートをしているような気分で楽しく捜査をしていた。
 二人は人通りの少ない場所に来た時、鈴木が突然振り向いて、
「里香ちゃん、彼氏いるんですか?」
「いいえ、今はいません」
 それを聞いた鈴木は緊張した表情で、
「そしたら……あの……実は……」
 と言いながら、次の言葉が出ない。
「どうしたの? 鈴木君」
 里香はこぼれるような笑顔で訊ねた。
 その笑顔を見た鈴木は勇気を振り絞って、
「里香ちゃん、俺と付き合ってくれませんか?」
 と言った鈴木の顔は真っ赤になっていた。
 里香は、そんな予感がしていたので笑顔で、
「いいわよ、嬉しいわ。ありがとうございます」
「あーあ、良かった。こちらこそ、ありがとうございます」
 鈴木は子どものよう含羞んで言った。そして、溌剌と捜査を始めた。
 どんべえは人間が通れない都会の獣道のような狭い路地や隙間を嗅ぎ回って捜査していた。しかし、豪雨のためラッキーの匂いが流されているので、どんべえの鋭い嗅覚でさえも役に立たなくなっていた。まったくラッキーの形跡すら見付けることができず街を彷徨っていた。
 江美から無線が入ると、どんべえは耳をピクピク動かして、
「クーン……まったくわからない」と、言うように鳴くしかなかった。

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