それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その8
 中村は、憧れの江美と二人っきりで行動しているので、無邪気な少年のようにうきうきしていた。
(このままずっとラッキーが見付からなかったらいいのに……)などと、不謹慎なことを思いながら捜査していた。
 それを鋭く見抜いた江美は、
「中村君、もっと真剣に捜査してよ。どうも心が舞い上がっているように感じるわ」
 ドッキとした中村は、(江美さんは人の心まで鋭く見透かしている。油断ならない女性だ……)と、関心しながら、
「どうもすんまへん。江美さんと一緒やから、もうドキドキして……」
「そうなの、中村君って純情なのね」
 そう言いながら、江美はクスクス笑い出した。
「もーう江美さん、からかわんといてください」
 中村は頭を掻きながら照れていた。
「中村君、その照れた顔がめちゃかわいいわ……」
「江美さん、堪忍してえや……。真剣に捜査しますさかい」
「わかったわ、ごめんなさいね。でも、これが解決すれば一緒に飲みに行こうね」
「えっ、ほんまでっか?」
「本当よ、中村君すごく頑張ってくれているから……。この前、言ったこと忘れていないわよ」
 江美はこぼれるような笑顔で応えた。
 それから、中村は人が変わったように真剣に聞込みを始めた。
 道行く人たちに手当たり次第、ラッキーの写真を見せて訊ねていた。しかし、まったく手掛かりになるような情報はなかった。
 一方、鈴木と里香は自転車を降りて、徒歩で新世界の飲食店やパチンコ店に入り、お客さん一人ひとりにラッキーの写真を見せて訊ねていた。里香は初めての経験なので、緊張してドキドキしながら鈴木に寄り添っていた。
 あるパチンコ店に入ると場内は超満員、クラブでかかるような音楽がガンガン響き、客を盛り上げるアナウンスが流れていた。場内は叫ぶように話してやっと聴き取れる状態だった。
 鈴木はパチンコに熱中しているお客さんへ、
「すみません、この仔犬を見かけたことないですか?」
 里香から送信してもらった携帯電話の写メールを見せて叫ぶように訊ねた。
 お客さんは警官だと知るとそっけなく、
「ない、ない」
 左手をバイバイするように振って答えていた。
 ある壮年のお客さんからは、
「えっ、仔犬がどないしたんや?」
「実は、誘拐されて迷子になったです」
「ふーん、そうかいな。警察は迷子の仔犬なんか捜している暇あるんか?」
 煙草をふかしながら嫌みを言われた。

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