それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その7
 さらに、城田は怒りを抑えながら話しを続けた。当時いた三十数名の社員の生活を守るため止む終えず、役員全員が会社から身を引くことにした。それを引換にヤミ金融の返済の話しを大沢にすると、城田個人の借金だから会社とは関係ないと突き放され無視された。
 結局、ヤミ金融の強引な取り立てに追われるはめになり、家族に迷惑がかからないように一家離散した。そして、ヤミ金融から逃れるため、あいりん地区に身を隠した。
 最近になってクレームの原因は大沢が社員と結託して企んだ乗っ取りのシナリオだったことがわかった。何としても、大沢へ仕返しをしたくて子犬を誘拐した。大沢を脅迫してヤミ金融の返済分でも巻き上げようと思っていた。と、城田は悔し涙を流しながら語った。
「そうだったの……ほんとうに大変だったんですね。悔しい気持ちはよくわかります。でも……だからと言って誘拐はよくないわよ」
 江美は同情しながらも罪を戒めた。
「それはよくわかっています。でも……今の俺には子犬を誘拐することしか、大沢への仕返しができないと思ったんです」
「そんなことないわよ。他に方法はあるんじゃないの」
「何回も電話したが、会ってくれないんだ」
「大沢さんは逃げてるのね」
「逃げてると言うか、俺を無視しているんだ。だから、強行に仔犬を誘拐したんだ」
「城田さんの気持ちはわかるけど……で、盗んだ仔犬はどこにいるの?」
「それが、逃げられたんです」
「えっ、逃げた!」
 江美は驚いて叫んだ。中村と鈴木も江美と唱和するように叫んだ。その瞬間、天空を切り裂くように稲妻が走った。そして追いかけるように轟音が大地を揺るがした。江美の心は雷より激しく衝撃を受けた。
「仔犬はいつ、どこで、逃げたの?」
「昨日の夜十時頃、さっきの商店街で逃げられました」
「昨日の夜……商店街で……」
 江美は困惑した表情で呟いた。そして、城田の首のツボを人差し指で鋭く突いた。しばらくすると城田は頭を激しく左右に振って手足も動き出した。
 しかし、感応の術だけは城田の心に深く残すことにした。十日もすればこの術は自然に消え去るが、それまでに必ず改心するだろうと江美は思った。
 しばらくするとパトカーがやって来て、観念した城田を西成警察署へ連行した。
 ラッキーが逃げた商店街から、三班に手分けして本格的に捜査することにした。一班は江美と中村があいりん地区方面、二班は急いで駆け付けて来た里香と鈴木が新世界方面、三班の忍者犬どんべえは自由に捜査させることにした。中村と鈴木は警察官の制服に着替え、江美と里香は婦人警官の制服を借りて、午前十時頃から豪雨のなかカッパを着て捜査を始めた。

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