それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その6
 江美は大きく息を吸って肺の空気をゆっくり吐き出した。そして観念したように、城田の首のツボを人差し指で強く押した。
 すると、城田は「ウッ、ウッ」と呻いて、体が人形のように硬直してしまった。だが、目と口だけは動いていた。
 城田の目をじっと見つめていた江美の瞳がキラキラと光り輝き出した。そして、城田の目を釘付けにした。
 ……そのまま三分が過ぎた。
 城田の瞳は血走ってトロンとなっていた。
「あなたは元社長の城田さんですね」
「はい、そうです」
 その不思議な光景を見ていた中村と鈴木は目を見合わせ、不可解な顔をして首を傾けていた。
 これぞ、くノ一忍法「感応の術」。この術は江美の素直な心が相手の心に感応して、素直な心にさせる忍術だった。
「城田さん、大沢さんの仔犬を盗んだんですか?」
「はい、盗みました」
「仔犬はどこにいるんですか?」
 城田は悲しい表情をしてそれには答えず、静かに口を開いた。
「実は、大沢に騙されて会社を乗っ取られたんです」
「えっ、騙された? 詳しく聞かせてくれますか?」
 江美が同情して優しく訊ねると、城田は身動きできない壊れたロボットのように、口だけをパクパクして話しを続けた。
 それは、三年前から大沢の会社と取引が始まり、順調に売上が伸びて会社の設備投資や優秀な人材を増やしていった。そして、大沢が応援するからと言う口約束で、携帯電話のソフト開発に約一年間全力で取り組んだ。計画では大きな利益をあげれるはずだったので城田は少ない私財をつぎ込んで真剣に取り組んだ。しかし、支払いは大沢から再三クレームをつけられ延ばし延ばしにされた。
 あと二ケ月後には、大沢から五千万円支払うと言うことを確認したので、人件費や営業経費が底を突いて足らない一千万円を安易な考えで、ヤミ金融を利用して城田個人で借りてしまった。しかし、約束の日になっても大沢は理不尽なクレームをつけて五百万円しか払ってくれなかった。ついに資金ショートして、会社の運営ができなくなった。
 大沢はそれを待っていたように、会社を存続したければ、クレームの責任を取って役員全員が辞めたら会社を救おうと条件を出してきた、と語った。
「大沢さんはなんて卑怯な汚いことをするのかしら」
 江美は激しい怒りが思わず大きな声になってしまった。雨は激しさを増し、みんな水をかぶったようにずぶ濡れになっていた。

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