それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第四章 その4
 しばらくすると城田が目を醒ました。
 側にいた中村は気さくに、
「おっちゃん、缶コーヒーでも、どうでっか」
 城田の前に差し出した。
「おおきに、すまんなぁ」
 城田はそれを受け取って、美味そうに飲んだ。
 すると鈴木が、
「おっちゃん、パン食べない?」
 そう言いながらそっと置いた。
「おおきに、いただくわ」
 城田は美味そうにパンも食べ出した。
 こんなことをしながら城田を拘束していると、南の方からこちらへ猛スピードで駆けて来る影が見えた。
 影は中村たちの前でピッタと止まった。
 影が止まると周囲は花が咲いたようにパッと明るくなった。
 この商店街にこんな美しい女性が現れることは、夢のようなことだった。坐っていた城田は見上げて、影に見とれて唖然としていた。
 影はピンクのTシャツにジーンズ姿の江美だった。
「中村君、鈴木君ご苦労さまです」
 江美はそう言って、しゃがんでどんべえの頭を撫でて「ご苦労さん」と、ささやいた。
 そして、城田を見つめて微笑んだ。
「おはようございます。元社長の城田さんですね」
「えっ……」
 城田は絶句した。江美はすかさず訊ねた。
「城田さん、盗んだ仔犬はどこなの?」
「……」
 城田は素早く立ち上がり、側にいた鈴木をはね飛ばして逃げ出した。
 猛追するどんべえのうしろには江美、そのうしろには中村と鈴木が必死で走っていた。どんべえは大きくジャンプして城田の背中に飛びついた。しかし、城田は上着を脱ぎ捨ててどんべえを振り払い疾走した。
 どんべえはトップギアに切り替え、ものすごいスピードで城田を追い越した。数十メートル走って素早く振り向いたどんべえは城田へ激しく吠えて牙をむいた。城田は怯む様子もなく、どんべえに向かって足蹴りを炸裂させた。
「キャン」と鳴いたどんべえは、斜めうしろへ大きくジャンプして間一髪でそれを躱した。
 それを見ていた江美は走行するスピードを上げて城田を猛追した。城田は商店街を抜けて小さな公園に入った時、城田の頭の上を鳥のような影が掠めた。疾走する城田の前をひらりと舞い降りた影は江美だった。
「逃げても無駄よ、観念しなさい」
「なんやと」
 怒鳴った城田は、江美めがけて飛び膝蹴りで攻撃した。それをしなやかにとんぼと切って躱した江美は、
「往生際が悪いのね」
 微かな笑みを浮かべて小声で言った。

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