それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第一章 その4
 タイミングよく社長につながって仔犬の詳細を話すると、以外にもそれはおもしろいじゃないかと言って、
「杉田店長に任せるから江美とよく相談しなさい。しかし、詐欺には十分注意して取引しなさい」と、釘をさされた。
 かたずを呑んで待っていた江美が、店長にどうだった? と訊くと、
「社長は、私に任せるとおっしゃっていました」
「じゃあ、杉田店長はどうなの?」
「いや……三百万円もする仔犬は……ちょっと」
「のる気じゃあないの? こんなチャンス滅多にないのよ」
「それは、わかっているんですが……」
「わっかているなら何故、躊躇してるのよ」
「詐欺かも知れないと思うんです。社長も詐欺にはくれぐれも注意するようにって」
「ふーんそうだったの。でも、これはきっと詐欺じゃないわ。だったら賛成?」
「はあ、江美ちゃんが責任をとってくれるなら……」
 店長は恐縮して小さな声で言った。
「いいわよ。何かあったらウチが責任をとるから、だったら賛成?」
「はい……江美ちゃんに任せます」
 店長はホッとして笑みを浮かべて言った。
「やった、じゃあ決定! 杉田店長、あとはよろしくお願いします」
 江美はこぼれるような笑顔でウキウキとステップを踏みながら、しつけの部屋へ戻った。
 しかし店長は、江美が責任をとるっと言ってくれたものの、店長としての責任も痛切に感じていた。もしかして詐欺ではないかと心配で仕方なかった。
 確認のため世界ミニチュアダックスコンテストのデータなどを調べたり、動物代理店や専門家に電話して確認した結果。おそらく詐欺ではないと確信して、急いで購入を申し込んだ。
 翌日、ミニチュアダックスAZの仔犬の契約は無事完了した。
 五日後、その仔犬がわんランドにやって来ることになった。しかし、店長はこの目で仔犬を見るまで不安で仕方がなかった。
 一方、江美といえばまったく詐欺の心配もしないで仔犬の来るのをソワソワして楽しみに待っていた。
 やっと待ちに待った仔犬が来る日になった。
 約束の午後一時を過ぎてもミニチュアダックスAZの仔犬はやってこない。店長は店頭に出て腕時計を見ながら落ち着かずウロウロして(もしかして、詐欺だったのでは……)と、思う店長の額には冷や汗が流れ出した。店先にある花壇には赤や黄の色鮮やかなチューリップが店長の心と裏腹に凛々しく咲き誇っていた。
 午後一時半を過ぎた頃、さすがの江美も不安になって店頭に出て店長と同じように周辺をウロウロしたり、キョロキョロしたり、まるで動物園の熊のように落ちつかない二人になっていた。
 店長は社長の「詐欺には十分注意して取引しなさい」と言った言葉を思いだすと、もし仔犬がこなかったら責任をとって店長を辞めようとまで考えていた。いてもたってもおれなくなった店長は売主へ電話しようと番号をプッシュした時、一台の白いワゴン車が停車した。
 店長は電話を止めてじっと見つめていると、ワゴン車から降りて来た三十代の美しい女性が大事そうにカゴをかかえて急ぎ足で歩いて来た。
それに気づいた江美は慌ててその女性に近づき、
「こんにちは、仔犬ですか?」
 と、小声で訊ねた。
「ええ、そうです。遅れて誠に申し訳ございませんでした」
 女性は深々と頭を下げて謝った。

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