それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
スポンサーサイト

第三章 その6
 中村は困った表情をして、
「江美さん、そんなこと言わんと協力させてなぁ」
「ほんと、協力してくれるの?」
「あたり前でんがな、江美さんのお願いなら何でのするさかい。で、変装って……何になるんでっか?」
「日雇労働者よ」
「えっ、日雇労働者でっか」
「そうよ、日雇労働者になって新世界やあいりん地区で元社長を捜して欲しいの」
 中村と鈴木は顔を見合わせて情けない顔をした。
「何を情けない顔してるのよ。日雇労働者を馬鹿にしてはいけないわ。いろいろ事情があってこの地域で必死で生活しているんだと思うわ」
「おっしゃる通りです。喜んで日雇労働者になりまっさ」
「よかった……ありがとう中村君、鈴木君。いくらウチが変装できても男の日雇労働者にはちょっとなれないから……助かるわ、感謝します」
 江美はこぼれるような笑顔で言った。
「江美さんにそんなに喜んでもらえるんやったら……もう死ぬ気で頑張りまっさ」
 中村は気合いの入った顔をして言った。
 すると江美はにこにこ笑いながら、
「別に死ぬ気で頑張らなくてもいいから、本物の日雇労働者になりきって、早く元社長を捜してちょうだいね」
「はいっ、では日雇労働者になりきって捜査します」
「ところで、中村君はあいりん地区へ行ったことあるの?」
「まぁ、近くの飛田に行ったついでに、ブラブラしたことはありまっせ」
「えっ……飛田? 聴いたことあるわね。いかがわしい場所じゃなかったの?」
「いかがわしいとは失礼な……、飛田遊廓があるお陰で、性犯罪が減ってまんねんで」
「で、中村君はその遊廓に入ったことあるの?」
「あたり前でんがなぁ、まあ……人生経験ちゅうもんでんな」
「何が人生経験よ……、エッチね」
「エッチと言われればエッチやけど、男は無性に女が恋しくなるんですわ。なぁ……鈴木も、そうやろ?」
「中村先輩ほどでは無いですが……まあそういうときもあります」
 鈴木は赤面して小さな声で言った。
 中村は大きく頷いてから真剣な表情になって、
「江美さん、俺はいつも感心してるんやけど、遊廓にいる若い女性はみんな気立ての良い子ばっかりなんですわ」
「もう……恥ずかしいからその話し止めて」
 江美は赤面した顔を両手で隠して言った。
「江美さん、ウブでんなぁ」
「もう……怒るわよ中村君。そんなことどうでもいいから、しっかり捜査してよ。間違っても遊廓に寄らないでね」
「はいっ! 了解しました。では、行って参ります」
「ちょっと、待ってよ……その恰好じゃ警官じゃないの。近くの古着屋さんで服を買って、日雇労働者に変装してくれる。はいこれ運転資金よ」
 江美は財布から一万円札を十枚取り出して中村に渡した。
「江美さん、こんなにも運転資金はいりまへん」
「何を言っているのよ、元社長を見つけるまでは帰ってこれないんだから」
「えっ……見つかるまで帰れない、そんな……」
「そうよ、だからこそ真剣に捜せるじゃないの。望月警視にはちゃんと話してあるから心配しないで思い存分、捜査してね」
「それじゃ元社長が見つかって、無事ラッキーを救えたら、デートしてくれまっか」
「何を言ってるのよ……でも、中村君が頑張ったら考えてもいいわよ」
「ほんまでっか。では、頑張って捜査しまっさ」
 それから一時間後、中村と鈴木は薄汚れた作業服にタオルを首に巻いて日雇労働者の恰好をして新世界をうろついていた。

ブログランキング参加中!
▼クリックしていただけたら励みになります。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気blogランキングへ
この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://shigezo26.blog95.fc2.com/tb.php/35-2e6dc294
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)