それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第三章 その5
 すると突然、車の助手席のドアが開いて、
「あぁ……疲れたわ、どっこいしょう」
 と言いながら、お婆さんが車に入って来た。
「あらあら……おまわりさん、こんにちは」
 お婆さんはにこやかにあいさつをした。中村は不思議な顔をして、
「こんにちは、お疲れさまです。お婆さんも里香さんの仲間でっか?」
「いいえ……仲間じゃなくて、里香の祖母なんですよ」
 警官の中村は驚いて、
「申し遅れました。私は警察官の中村隆司、隣は後輩の鈴木博之でございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「あら、標準語も話せるじゃあないの」
 と笑いながら、お婆さんはかつらと仮面をとった。
「何だ……江美さんだったんでっか」
「何だとは、何よ……江美で悪かったわね」
「それにしても、見事な変装ですなぁ。全然、気がつきまへんでした」
「誉めてくれてありがとう……中村君も変装したい?」
「江美さんの命令なら変装でも何でもしまっせ」
「ほんと……よかった。来てもらった甲斐があるわ」
 江美が言うと、中村と鈴木は目を合わせて神妙が顔をした。
 にこにこ笑っていた江美も急に真剣な表情になって、里香に大沢の会社の調査状況を訊ねた。
 里香は簡潔に調査内容を説明した。
 江美は聴き終ると、
「やはり……会社買収で大沢を恨んでいる人物がいるようね」
 と、呟いた。
 江美が大沢を尾行してわかったのは、間違いなく新世界付近へ人を捜しに来ていたことだった。串カツ屋をのぞいたり、店員や歩いている人に何か訊ねたり、キョロキョロしながら天王寺動物園の方へ行ったので、江美はこのまま尾行するより、里香に頼んだ調査を聞いて、警官に協力してもらう方が賢明だと考えて戻って来た。
 みんなの話をまとめると、ソフト開発会社の元社長とラッキーを誘拐して北へ向かった年配の男、そして大沢が新世界へ誰かを捜しに来た。この三つはひとつの線でつながっているように思えてならなかった。
「里香ちゃん、ところでソフト開発会社の元社長の城田幸雄は、今どうしているか調べたの?」
「はい、それが……会社買収されてから離婚して、今は行方不明だそうです」
「行方不明……? やっぱりここだわ、ここにいるんだわ」
「江美さん、ここにいるって……元社長がでっか?」
「そうよ。新世界かあいりん地区にいるのよ……きっと。だから、大沢さんが真っ先にここに捜しに来たのよ」
「里香ちゃん、元社長の写真はないの?」
「あるわよ……これです」
 プリントアウトした顔写真を見ながら江美は、
「さすが……里香ちゃんね、ありがとう。やっぱり中村君と鈴木君の出番だよ」
「ええ……なんでっか?」
「それはね……中村君がしたかった変装よ」
「いや、別にしたくはないでんがなぁ」
「じゃあいいわ、もう帰って」
 江美は口を尖らせすねた顔をして言った。

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