それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第二章 その11
「それは、ここにいる男性以外の匂いが、庭に残っているからです」
「えっ、男性の匂いが残っているって?」
「ええ、どんべえがその匂いを見付けたんです」
 江美は大沢の目を見つめて答えた。
「どんべえ……? あのペットショップわんランドの看板犬の?」
「そうです」
 不思議な顔をしている大沢へ奥さまはそっと耳打ちした。「えっ」と驚いた大沢は江美に訊ねた。
「江美さんは、どんべえと会話ができるんですか?」
「ええ、できます。実はどんべえは特殊な訓練を受けた忍者犬なんです」
「忍者犬……?」
「ご主人、詳しいことは落ち着いてからお話します。それより一刻も早くラッキーを探し出さないといけないので、ウチを信じて協力してくださいませんか」
「……」
 大沢はソファーに坐ったまま目を閉じて黙っていた。
「ご主人、もう一度お訊ねしますが、本当に恨まれるようなことはないんですか?」
「ん……」
「あなた、本当に心当たりはないんですか?」
 奥さまは心配そうな表情をして大沢へ詰め寄って訊ねた。
「心当たりは……ないよ」
 と、大沢はぼつりと言葉を投げ捨てた。そして暗い表情をして奥へ入ってしまった。奥さまは顔を曇らせながら大沢のあとを追いかけた。
 里香は庭にいる二人の警官へリビングに来るように呼びかけると、
「おおきに、待ってました」
 と言って、すぐリビングへやって来た。
 江美は二人の警官へ調べた結果を説明すると、
「やっぱり誘拐でっか……おもしろくなってきましたなぁ」
「何をとぼけたこと言っているんですか。最近の警官は不真面目ね」
「えらいすんまへん。そんなつもりで言ったじゃあないんです」
「じゃあ許しあげる。でも真剣に働いてよ、ちゃんと税金払ってるんだから」
「はあ、市民のためにほんま真面目に頑張ります」
 江美に叱られた警官の中村は恐縮して下を向いていた。
 しばらくしてリビングに現れた奥さまは警官にしがみついて、
「おまわりさん、どうかかわいいラッキーを見付けてください。よろしくお願いします」
「了解しました奥さま、最善の努力はします。ところでラッキーの写真はないでっか。それと特長を聴かせてくれまっか?」
 奥さまは本棚の引き出しから数枚の写真を持って来て警官の中村に渡した。
「ほーう、ゴールドの毛並みはほんまきれいですなぁ、それに賢そうな顔してまんがな……」
 中村は感心しながら呟いた。後輩の鈴木も写真を覗きながら頷いていた。

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