それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第二章 その7
 帝塚山の街では幸運をもたらす奇跡の仔犬の噂が広がり、大沢邸の広い庭を塀の隙間からのぞく人が現れた。のぞく人といっても、ほとんどは周辺の子どもたちばかりだった。小学生は下校時に大沢邸の塀からのぞいて仔犬を見つけると「幸運がもらえる」と言って騒ぐことが日課になっていた。
 ある日、大勢の小学生が大沢邸の庭をのぞいて仔犬を見たとか見えないと言って騒いでいた。それを知った大沢の奥さまは、門を開いてみんなに声をかけた。
「みなさん、よかったら入ってください。仔犬のラッキーも喜ぶでしょうから」
 すると、小学四年生くらいの女の子が、
「へえ……あの仔犬、ラッキーって言うんだね。おばちゃん、本当に庭に入っていいんですか?」
 こぼれるような笑顔で言った。
「もちろんいいですよ。さあ、入ってラッキーと遊んでやってください」
「わぁーい、ありがとうございます」
 大勢の男女の子どもたちは大喜びで庭へ入った。
 ラッキーはみんなを見てしっぽを激しく振りながら庭を走り回ったり、子どもに戯れついたりして大喜びしていた。
「めっちゃかわいい」
「ほんとだ、毛が金みたいにキラキラ光ってるよ」
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「ラッキー、こっちへおいで」
 名前を呼ばれるとラッキーは大喜びして、子どもたちに飛びついて戯れていた。
 今まで子どもたちはこの家を通り過ぎるだけだった。しかしラッキーがこの家にいるだけで、こんなに子どもが集まってくれるなんて、奥さまはまるで夢を見ているようだった。
 一度にたくさんの子どもができたような気持ちになった奥さまは、感激して目に涙を浮かべていた。
「おじょうちゃんはお名前なんていうの?」
 奥さまは、ラッキーを抱っこしていた小学校上級生くらいの女の子に優しく訊ねた。
「山田奈々です」
「そう、奈々ちゃんいいお名前ね。で、何年生?」
「小学校四年、二組よ」
「へえ……四年生なの、奈々ちゃんは犬好きみたいだわね」
「うん、わんちゃん大好きよ。でもラッキーはもっと好きだよ、めっちゃかわいいもん」
「ありがとう、ラッキーも奈々ちゃん大好きだと言ってるわよ」
「ほうとう、ラッキーは奈々が好きなの?」
 ラッキーは尻尾を激しく振って奈々の顔をペロペロと舐めた。
「うわー、めっちゃかわいい」
 奈々はとろけるような笑顔で大喜びした。そして、
「おばちゃん、ラッキーは幸運をもたらす仔犬って、本当なの?」
 と、キョトンとした表情で訊ねた。
「本当よ、おばさんはそう信じているわよ」
「へえー、本当なんだ。ラッキーってすごいんだね」
 奈々はラッキーの頭を優しく撫でながら言った。
 奥さまは部屋からお菓子を持ってきて、子どもたち一人ひとりに手渡した。みんなは元気よく「ありがとう」とお礼を言って受け取っていた。子どもたちはおやつまでもらって感激して、ラッキーと一緒にはしゃぎ回っていた。
 子どもに恵まれなかった奥さまは、ラッキーがお金では買えない、素晴らしいものを与えてくれていることに改めて感謝した。
 その日から、奥さまはたくさんお菓子を買って、子どもたちが遊びにくるのを毎日楽しみに待っていた。

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