それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第二章 その4
「ありがとうございました。では、そろそろしつけ教室を始めましょうか?」
 と、江美が言った。すると里香はしつけの資料を奥さまに手渡した。
「それでは……よろしくお願いします」
 奥さまは無邪気な少女のように微笑んだ。
 江美は資料を開いて奥さまへ確認するように語り始めた。
「長い間、犬を飼っていらっしゃるので誰よりも犬のことはわかっていると思いますが、この資料を基本にお話したいと思いますので、よろしくお願いします」
「いろいろと聴いた雑学がありますが、しつけを正式に学ぶのは今回が初めてですから、江美さんのご指導通りしますからよろしくね」
 奥さまは澄んだ瞳を輝かせて言った。
「まず、ラッキーをかわいいからといって甘やかせ過ぎないようにしてくださいね。どこにでも一緒に連れていける賢いラッキーにしたいと思いますから。それから、奥さまが学んだことはご主人にもよく話してくださいね。ご夫婦の言うことがちぐはぐだったら、ラッキーはどうしたらいいか迷いますから、よろしくお願いします。例えば、ダメならでダメ、待てなら待てとご夫婦で統一してくださいね」
「はい、わかりました」
「犬は人間とは違った考え方があることをわかってくださいね。犬のことを理解してあげれば、素晴らしいスキンシップが取れます。そして、しつけをスムーズにするには飼い主と犬との信頼関係が最も大切なんです」
「えっ……信頼関係ですか?」
 奥さまは少し驚いて訊き直した。
「そうです。信頼関係も犬がリーダーにならずに、あくまでも飼い主がリーダーシップを持つことがしつけの訓練に入りやすくなるんです」
「リーダーシップ……ですか?」
「そうです。しかし、奥さまが気づかないうちにラッキーは密かに自分のことをリーダーだと思っているケースが多いんです。それはラッキーを愛して甘やかすことが、逆にラッキーを調子に乗せてリーダーになってしまう場合があるんですよ」
「そういえば、ガンで死んだラッキーはそういう感じでした」
「そうでしたか。犬がかわいいからつい思うがままにさせると、自分がリーダーだと思ってしまう場合が多いんですよ」
 里香はラッキーを見つめながら二人の会話を静かに聴いていた。
 江美はしつけの資料をパラパラとめくって話しを続けた。
「始めに犬の考えをわかるには、まず鳴き方でわかってあげることです」
「そういえばいろいろな鳴き方するわね……」
 奥さまは資料に目を落としながら呟いた。

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