それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第二章 その3
 奥さまは立ちあがって本棚から二冊のアルバムを持ってきて、
「ちょっと、これ見てくださいますか」
 と言いながら、江美に手渡した。
 江美はアルバムを開いて見ると、初代と二代目のラッキーの子どもから成長していく過程が写真とコメントで記録されていた。江美と里香はアルバムをめくりながら、
「うわ……めちゃかわいい」
「おもしろい顔してる」などと、はしゃぎながらベージをめくっていた。すると、江美は見覚えのある城を背景にして初代ラッキーが写っている写真があった。よく見るとその城は間違いなく上野城だった。江美の生まれ育った地域だけに懐かしくなって奥さまに訊ねた。
「これは伊賀の上野城ですね」
「あら、江美さんその写真を見ただけでよくわかるわね」
「実は、ウチの故郷なんです」
「そうだったんですか。実は主人が忍者が大好きで、あこがれの忍者屋敷に見学にいったときの記念の写真なんですよ」
「へーえ、ご主人は忍者が好きなんですか」
「ええ、忍者に関する本や映画は喜んで観ていますよ。まるで子ども見たいなところもあるんですよ」
 それを聴いた江美は心から嬉しくなった。たまたまオークションで購入してくれたお客さんの主人と趣味が合って、奥さまもこんなに犬を大切にしてくれていることを思うと感激した。
「ラッキーおいで」
 奥さまが呼ぶと尻尾を激しく振りながら嬉しそうに寄ってきた。
「奥さまは、ほんと犬が好きなんですね」
 里香が笑顔で訊ねると、
「ええ……どんな動物も好きなんですよ。でも特に犬が大好きなの。忠実で可愛くて、つい私の子どもだと思ってしまうんですよ」
「そうなんですか……ラッキーは幸せですね」
 里香は奥さまに戯れているラッキーを見つめながらしみじみと言った。
 江美は少し気になっていたことを奥さまに訊ねたくなって、
「奥さま失礼ですが、こんなに裕福な生活をされていて、なぜ、幸運をもたらす奇跡の仔犬を購入したかったのですか?」
 すると奥さまは微かに笑みを浮かべて、
「裕福な暮らしはさせてもらっていますが、お金では買えない物があるんですよ」
「お金では買えない物って……?」
「実は主人のことで……」
 奥さまは躊躇しながら口ごもった。江美は深入りして訊ねたことを後悔しながら、
「奥さま、失礼なことを訊ねて申し訳ございませんでした」
「江美さん、いいんですよ。主人のことでいろいろ悩んでいることがあって……、主人には内緒でオークションに参加したのよ。だから、私のへそくりで購入したの。幸運をもたらす奇跡の犬だっていうこともまだ主人には話していないのよ」
「そうだったんですか。でも、きっとラッキーが幸運をもたらしてくれますよ」
 江美は真剣な表情をして言った。すると奥さまは、
「そう願っているんですけど……」
 年甲斐もなく含羞んで応えた。

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