それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
第一章 その12
「オークション開始の時、妨害する入札や落札は禁止だと確認したはずです。この案内状の注意事項にも罰金のことを大きく書いてあるではないですか」
 江美は、案内状を見せて厳しい口調で詰め寄った。
「まあ、そうガミガミ言うなよ……そろそろ帰るか」
 壮年はそう言って、江美を睨みつけて立ち上がった。そして事務所をでて行こうとした。すると、店長は飛んで行って壮年を制止したが、もの凄い力で突き飛ばされて尻もちをついてしまった。
 江美は目にも止まらぬ早さで壮年の背後から右腕を捻じ上げた。
「痛ったた、こら……放せ……」
 壮年は悲鳴をあげながらもがいたが、もがくほど痛くなるので静かになった。江美は壮年をソファーに無理やり坐らせ、人差し指で壮年の首のツボを鋭く突いた。「ウッ」と呻いた壮年の動きが止まった。
 手も足も金縛りにあったように動かない。ただ目と口だけは動いていた。すかさず江美は壮年に詰問した。
「なぜ? オークションの妨害をしたの?」
「ん……」
「なぜなの?」
 目だけが天井を見つめ黙っている壮年にもう一度、詰問した。
「知らん」
 それを聴いた江美は目を閉じた。そして、静かに両手を合わせて合掌した。壮年は顔も動かすことができないので、ただ江美の不思議な動作を見つめていた。
 突然、江美は「パッ」と目を開けた。江美の大きな瞳はキラキラと輝き壮年の目を釘付けにした。
 ……そのまま三分間が経った。
 すると壮年の目は血走ってとろんとしていた。
 これぞ、くノ一忍法「赤ちゃんの術」。これは催眠術で赤ちゃんのように心が素直になって、何でも正直に話すという江美の得意技であった。
 江美は赤ちゃんに話しかけるように優しく、
「ねえ、ぼくちゃんどうしてイタズラしちゃったの?」
「あのね……たのまれたの」
「そうなの、だれにたのまれたの?」
「あのね……おっぱいの大きなおねえちゃんに」
「ふーん、おっぱいすきなの?」
「うん、だいすきだよ。おねえちゃんのおっぱいも大きいね」
「こら、さわったらだめだよ。ぼくちゃんエッチだね」
「ええ……エッチってなに?」
「ごめんね、変なこときいて」
「うん、いいよ」
「おっぱい、おいしい?」
「うん、めっちゃおいしいよ」
 江美は、ちょっと壮年をからかって「クス・クス・クス」と、へそから茶を沸かしながら話しを続けた。

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