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それゆけ忍者
【自作小説】幸運をまねく奇跡の仔犬と忍者のヒューマン物語
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第一章 その1
■はじめに
大阪のペットショップ「わんランド」を舞台に物語は始まる。
「幸運をもたらす奇跡の仔犬」を巡りさまざまな事件に展開する。
忍者くノ一・服部江美と忍者犬・どんべえは事件解決のために駆け回る……。
ヒューマン・アクション忍者小説をお楽しみください。
■主な登場人物
服部江美:わんランドの経営者で仔犬のしつけ担当、実の姿は忍者くノ一
どんべえ:黒い中型の雑種犬、わんランドの看板犬だが実の姿は忍者犬
ラッキー:幸運をもたらす奇跡の仔犬、光チャンとも呼ばれる
木村里香:服部江美の秘書兼アシスタント
杉田三郎:わんランドの店長
大沢秀美:帝塚山の豪邸に暮らす白髪の上品な奥さま
大沢功夫:大沢秀美の主人、数社の会社を買収している実業家
中村隆司:大阪弁のおもろい警察官
鈴木博之:中村隆司の後輩で真面目な警察官
城田幸雄:ソフト会社の元社長で仔犬の誘拐犯人
高橋沙也加:飛田遊廓で働くエロかわいい女性
祐子:沙也加の高校時代からの親友
陽光が燦々とふりそそぐ昼下り、出窓に置いてあるおしゃれな陶磁器に植えられたチューリップの蕾が赤い花びらを覗かせ開き始めていた。その横で服部江美はパソコンのマウスを忙しくいじりながらインターネットで仔犬の最新情報を検索していた。
突然、江美の大きな瞳は液晶モニターの画面に釘付けになった。
そこには、
幸運をもたらす奇跡の仔犬
と、赤文字の大きな見出しがあった。
そして、その下にかわいい仔犬の写真と説明が書かれていた。
「ミニチュアダックスAZは毛並みが黄金に光り輝く珍しい犬で幸運をもたらす奇跡の仔犬として、ヨーロッパではひそかに人気がでている。奇跡の仔犬と呼ばれる理由は、この血統の仔犬を飼っている人たちは、みな幸運に恵まれ満足の人生を謳歌していた……。この血統の子どもは年に一回、数匹産まれるだけで、手に入れるのは非常に困難だといわれている……」
スクロールすると、奇跡の仔犬は飼い主にどんな幸運をもたらすのか。
一、体力が増し健康な体になる。
二、金運がついてお金持ちになる。
三、心が豊かになり人から好かれる……など、箇条書きで書かれていた。
さらにスクロールすると赤字で大きく、
「今なら先着順で、奇跡のミニチュアダックスAZの仔犬を三百万円で譲ります。詳しくは動物代理店までメールください」
とあった。
江美はこれはおもしろいと思って慌ててプリンターのスイッチを入れた。
この建物の一階では、
「うわーめっちゃかわいい」
「しっぽふってるよ」
「だっこしたいな」
「あっ、おしっこしている」など、
女子中高生の黄色い声や小さな子どもたちの甲高いかわいい声が飛び交っていた。
さらに、「ワン・ワン」、「クン・クン」、「キャン・キャン」と、仔犬たちの愛らしい鳴き声も混じって、店内は動物園より楽しい雰囲気が漂っていた。
この店は今、大阪市内で人気が急上昇していたペットショップ「わんランド」だった。
一階は仔犬の販売、二階はペット用品とトリーマー室、三階は事務所とペットホテルになっている。ここは仔犬専門のペットショップで、購入された仔犬の「しつけ」までアフターサービスとして行っていた。
この店のオーナーは忍者の里で有名な伊賀市に住んでいる服部和雄という五十歳前半の恰幅のいい壮年だった。名前から想像できるように戦国時代に闇の世界で活躍した伊賀忍者の棟梁・服部半蔵の末裔にあたる人物だと噂されていた。
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【2008/04/30 06:34】
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それゆけ忍者 第一章
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第一章 その2
このわんランドは、服部江美がオーナーの父親にお願いして開業したものだった。
江美は幼少から大きな屋敷の敷地内にたくさんの種類の動物を飼っていた。犬はもちろん猫、うさぎ、やぎ、きつね、たぬき、はと、ふくろう、アヒル、馬もいた。たくさんの動物たちといつも仲良く遊んでいたので、周りのみんなから「女むつごろう」と呼ばれていた。
江美はペットショップわんランドでは、販売した仔犬のしつけを担当していた。難しい運営管理は苦手なので、店長の杉田三郎という三十代の男性にすべて任せていた。
江美は身長百五十八センチ、小顔でスタイルは抜群に良く、身体能力は人並み外れて優れていた。瞳は大きく美人と可愛らしさを合わせたような顔立ちをしている。年齢は不詳だがどう見ても二十代前半くらいにしか見えない。
江美は子どもの頃から動物と触れ合うことのできる仕事が夢だった。特に、いつも人間を癒してくれる犬が大好きだから、犬だけに特化した犬専門のユニークなペットショップをしたいと父親に相談すると、それはいいことだと賛同してくれた。
父親は経営している服部建設会社の新規事業にすることにして、全面的にバックアップしてくれることになり、一年前にオープンした。
オープン当初からわんランドに、おもしろい犬がいると噂が流れ、その犬を見るためにやって来るお客さんも大勢いた。その犬は店の看板犬で「どんべえ」と呼ばれ、みんなから可愛がられていた。
どんべえは黒色の中型の雑種犬で目の周りがメガネのように茶色くなっていて、とっても愛嬌のある顔をしていた。そして、人なつこくて芸達者な賢い犬だから、もうすっかりお客さんの人気者になっていた。
店長の杉田三郎は、服部建設会社の総務部で信頼されていた社員、年齢は三十五歳。二枚目というより三枚目に近い顔立ちでいつもニコニコして愛嬌があった。社内では評判の動物好きだったので、ペットショップの店長にと白羽の矢が刺さった。杉田は社長から店長辞令を受けると飛び上がって喜こんだ。
オープンすると杉田店長は社長が驚くほどテキパキと仕事をこなして、わんランドを軌道に乗せてた。
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【2008/05/01 21:33】
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それゆけ忍者 第一章
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第一章 その3
江美は階段を駆け降りてプリントアウトした紙を店長に見せると、
「江美ちゃんおもしろそうですね。私に任せてください」
そう言って、微笑んだ。
一時間も経たないうちに詳しい情報と写真が返信されてきた。店長は江美を呼んで一緒に内容を読むと、
「幸運をもたらす奇跡の仔犬プロフィール、犬種:ミニチュアダックスAZ、毛色:ゴールド、性別:オス、誕生日:二○○八年二月六日、国名:フランス、父:二○○七年世界ミニチュアダックスコンテスト優勝、母:同コンテスト準優勝など……。最後に販売価格三百万円先着順」と、書かれていた。
「えッ! 三百万円」
店長は驚いて目をむいて叫んだ。
一方、江美は別ウインドウの画面に映っている仔犬の写真を見つめ、
「うわ……ゴールドの毛並みよ、ほんまめちゃめちゃ可愛い……」
と、呟きながら見とれていた。
どんべえもお坐りして画面をのぞき込むように「クーン・クーン」と、尻尾を振りながら喜んでいた。
江美は写真をじっと見つめたまま、
「杉田店長、すぐ買ってちょうだい」
びっくりするような大声で叫んだ。すると店長は驚いて、
「ええっ、江美ちゃん、三万円じゃないんですよ……わかっていますか?」
「もう、杉田店長はウチを馬鹿にしているの……」
「いや、馬鹿になんてとんでもございません。いいですか三百万円ですよ」
「三百万円だから、インパクトがあっていいんじゃないの?」
「それはそうですけど……今までミニチュアダックスは五〜八万円くらいで仕入れていましたから……」
「だから、どうしたの?」
「いや……この仔犬に関しては私が決済するには……ちょっと……?」
店長は困った表情をして言った。
「杉田店長が決済できないのなら、社長に電話して相談してよ……ねえ、お願い」
江美は大きな瞳からフェロモンでも発散しいるかのよに、店長をうっとり見つめて甘えて言った。
店長は、江美がこんな調子で甘えて困ることを言うのは慣れていたが、今回は価格が価格だけに、社長から「何を考えているんだ」と、怒鳴られるんじゃないだろうかと、びくびくしながら電話の短縮ボタンをプッシュした。
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【2008/05/02 05:04】
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それゆけ忍者 第一章
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第一章 その4
タイミングよく社長につながって仔犬の詳細を話すると、以外にもそれはおもしろいじゃないかと言って、
「杉田店長に任せるから江美とよく相談しなさい。しかし、詐欺には十分注意して取引しなさい」と、釘をさされた。
かたずを呑んで待っていた江美が、店長にどうだった? と訊くと、
「社長は、私に任せるとおっしゃっていました」
「じゃあ、杉田店長はどうなの?」
「いや……三百万円もする仔犬は……ちょっと」
「のる気じゃあないの? こんなチャンス滅多にないのよ」
「それは、わかっているんですが……」
「わっかているなら何故、躊躇してるのよ」
「詐欺かも知れないと思うんです。社長も詐欺にはくれぐれも注意するようにって」
「ふーんそうだったの。でも、これはきっと詐欺じゃないわ。だったら賛成?」
「はあ、江美ちゃんが責任をとってくれるなら……」
店長は恐縮して小さな声で言った。
「いいわよ。何かあったらウチが責任をとるから、だったら賛成?」
「はい……江美ちゃんに任せます」
店長はホッとして笑みを浮かべて言った。
「やった、じゃあ決定! 杉田店長、あとはよろしくお願いします」
江美はこぼれるような笑顔でウキウキとステップを踏みながら、しつけの部屋へ戻った。
しかし店長は、江美が責任をとるっと言ってくれたものの、店長としての責任も痛切に感じていた。もしかして詐欺ではないかと心配で仕方なかった。
確認のため世界ミニチュアダックスコンテストのデータなどを調べたり、動物代理店や専門家に電話して確認した結果。おそらく詐欺ではないと確信して、急いで購入を申し込んだ。
翌日、ミニチュアダックスAZの仔犬の契約は無事完了した。
五日後、その仔犬がわんランドにやって来ることになった。しかし、店長はこの目で仔犬を見るまで不安で仕方がなかった。
一方、江美といえばまったく詐欺の心配もしないで仔犬の来るのをソワソワして楽しみに待っていた。
やっと待ちに待った仔犬が来る日になった。
約束の午後一時を過ぎてもミニチュアダックスAZの仔犬はやってこない。店長は店頭に出て腕時計を見ながら落ち着かずウロウロして(もしかして、詐欺だったのでは……)と、思う店長の額には冷や汗が流れ出した。店先にある花壇には赤や黄の色鮮やかなチューリップが店長の心と裏腹に凛々しく咲き誇っていた。
午後一時半を過ぎた頃、さすがの江美も不安になって店頭に出て店長と同じように周辺をウロウロしたり、キョロキョロしたり、まるで動物園の熊のように落ちつかない二人になっていた。
店長は社長の「詐欺には十分注意して取引しなさい」と言った言葉を思いだすと、もし仔犬がこなかったら責任をとって店長を辞めようとまで考えていた。いてもたってもおれなくなった店長は売主へ電話しようと番号をプッシュした時、一台の白いワゴン車が停車した。
店長は電話を止めてじっと見つめていると、ワゴン車から降りて来た三十代の美しい女性が大事そうにカゴをかかえて急ぎ足で歩いて来た。
それに気づいた江美は慌ててその女性に近づき、
「こんにちは、仔犬ですか?」
と、小声で訊ねた。
「ええ、そうです。遅れて誠に申し訳ございませんでした」
女性は深々と頭を下げて謝った。
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【2008/05/03 00:05】
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それゆけ忍者 第一章
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第一章 その5
店長は慌てて女性に近づきカゴを受け取った。恐る恐るカゴのなかを見ると間違いなく写真通りの仔犬だった。店長はホッとして胸を撫で下ろした。
江美は仔犬を抱っこして頬ずしたり、キスをしたりして、まるで無邪気な子どものように喜んでいた。どんべえも大喜びして、仔犬の側から離れようとしない。親から離れて来た仔犬が寂しがらないように、ずっと優しく面倒を見てくれていた。
全国でペットの関心が高まるなか、特に犬の人気はグングン伸びていた。テレビのペット番組もたくさん増えていることを思い出した店長は、早速、わんランドのコマーシャルで利用しているテレビ局に電話した。
担当のディレクターに「幸運をもたらす奇跡の仔犬」のことを話すと、アナウンサーやカメラマンなどスタッフを大勢連れて取材に飛んで来た。
取材後、ディレクターは楽しくて興味深い内容に編集して、週末の土曜日にペット番組の超目玉として十五分間、関西方面で放映された。
すると、翌日は日曜日ということもあって、開店の二時間前からわんランドの入口は長蛇の列ができた。テレビ放映の影響力はこんなにも凄いのか……と、店長は感心しながらスタッフにテキパキと営業準備の指示をした。
午前十時、スタッフが入口が開くと、お客さんはまるでバーゲンセールのように我先にと押し合い掻き分けながら、テレビで紹介されたミニチュアダックスAZの仔犬の前に集まった。あっという間に柵の周りは黒山の人だかりができた。
仔犬はたくさんの人を見て大喜びして、可愛く尻尾を振りながら飛び回ってはしゃいでいた。
柵の前で子どもたちは、
「わあー、めっちゃかわいい」
「見て、見て、キラキラ光ってるよ」
「こっちこっち、わんチャンこっちおいでよ」などと言って大喜びしていた。
お客さんは子ども連れの家族が目立っていたが、中・高・大生の若い男女や年配の壮年、婦人も少なくなかった。
仔犬の柵の前には「幸運をもたらす奇跡の仔犬」と、タイトルの目立つポスターが貼ってあった。そこには「購入を希望されるお客さまは店長までお申し出ください」と、書いてあった。
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【2008/05/04 00:05】
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それゆけ忍者 第一章
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第一章 その6
それを見たお客さんは次から次に店長のところへ訊きにきた。店長は嬉しいような、困ったような複雑な気持ちになって、
「江美ちゃん、この状況で仔犬を販売したら掴み合いの喧嘩になって暴動が起きそうです。どうしたらいいでしょうか?」
江美は苦笑しながら、
「杉田店長、それはちょっとオーバーじゃない」
「でも、そんな空気を感じるんです……」
「そうね、この状況で誰かに販売したら、それに近い不満が爆発するかもしれないわね」
江美はそう言って、店内をさっと眺めながら、
「ほんと凄い人ね、今でも二百人はいるわ。困ったわね……」
と言って表情を曇らせた。
「何かいい方法ないかなぁ……」
店長は腕組みして呟いた。
「ねえ、里香ちゃん、いいアイディアないかしら?」
江美は側にいたアシスタントの里香へ訊ねた、
「そうね……ジャンケンでもしたら……?」
里香は自信なさそうに小声で言った。
アシスタントの木村里香は短大を出て大好きな犬に関連した仕事がしたくて、わんランドのオープン時に入社した。いつも笑顔で心の優しい女性だからスタッフに好かれ、犬にもよく懐かれていた。今では江美の秘書兼アシスタントとして頑張っていた。
「でも、これからお客さんはどんどん増えます。ジャンケンで決めてしまったら、あとからいらっしゃったお客さんがガッカリするんじゃないですかね……」
店長は不満そうに言った。すると里香は、
「じゃあ、抽選ではどうかしら?」
「抽選……悪くはないですね……」
じっと目を閉じて考え込んでいた江美はパッと目を開いて、
「そうだ! いい考えがあるわ!」
ビックリするような大きな声で叫んだ。
「江美ちゃん、いいアイディアありましたか?」
「あるわよ。今、流行っているじゃない」
「えっ、流行っているもの……?」
店長は首を傾げて呟いた。江美は満面に笑みを浮かべて、
「それはね、オークション!」
と、自信満々に言った。
「オークション、それはいい考えですね」
ポッンと手を叩いて、店長は賛同した。
「江美さん、里香も賛成です。オークションならお客さんも納得してくれるそう。で、いつするんですか?」
「来週の日曜日がいいと思うけど……杉田店長はどうですか?」
「いいんじゃないですか」
「じゃあ、決定ね」
江美は店長を見つめてとろけるような笑顔でピースサインをした。
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【2008/05/05 00:05】
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